家の猫「ゆき」〜避妊手術2〜
<2005年8月3日(水)writing>
たった一晩。
とは言え、ゆきの居ない一晩は、とても寂しいものでした。
たたんであった洗濯物の「かたまり」を見て、一瞬ゆきが寝転んでいるように見えてしまったり、
「もう手術は終わっただろうな。今頃、何しているんだろう…。色々な猫ちゃんや、ワンちゃんも居るだろうから、鳴き声や匂いで不安になっているだろうな…ごはん、ちゃんと食べただろうか…」
と、考えるばかりでした。
当時は仕事もしていましたが、仕事中もゆきの事が気になって気になって、本音、仕事どころではありませんでした。
「早く迎えに行きたい」
そればかりを考えていました。
この日は午後2時までのシフトでしたので、仕事が終わった直後、そのまま病院に向かいました。
とても早足だった記憶があります。
病院に着いて、
「ゆきちゃんですねー。あともう少し、待ってくださいね。」
そう言われ、待合室でそわそわ待っていました。
「あと少しでゆきと会える、ゆき、ゆき…」
心の中で、ずっとずっと思っていました。
「はゆきさん、どうぞー」
と、診察室にお呼びが掛かったのは、それから10分後でした。
診察室に入っても、まだゆきの姿は見えませんでした。
先生と、助手の看護師さんが私を迎えてくれました。
無事に手術終わりましたよ、と言う先生のお話の向こうで、聞きなれた声が聞こえました。
ゆきの声でした。
飼い主バカと言われても仕方が無いのですが、
「あー…ゆき!ゆき!」
と彼女の声に、ついつい声をあげてしまいました。
そしていよいよ、看護師さんに抱っこされたゆきと一晩振りに対面しました。
この一晩、心配しつつも、こんな事も考えたりしていました。
「所詮猫だし…、きっと病院でもそれなりに過ごしていて、心配をよそに、私の事はさほど考えてはいないのかも知れない」
その気持ちを打ち消したのは、対面した直後のゆきの顔でした。
毛並みもボサボサで、潤みがちな瞳に目ヤニをためて、私の瞳をしっかり見て、
「に゛ゃぁぁぁぁぁー!!!」
と叫びました。
この時のゆきの顔は、ずっと忘れないと思います。
私の目を離さず、そう鳴いたゆきに、とても愛おしさと、感動と、
「もうこの子は一生離さない…!」
と強く感じられた瞬間でした。
麻酔時に、爪もしっかりと切られたようで、つるつるの手。
そして首には傷口を舐めないようにと「エリザベスカラー」。シャンプーハットのようなものです。
お腹は毛を剃られ、痛々しい傷口と糸。
診察台に乗せると、エリザベスカラーのせいでヨタヨタと歩くゆきを見て先生がこう言いました。
「ちょっとゆきちゃんには辛いかも知れないですね。「はらまき」がいいかも知れないね。」
と言って、「はらまき」の見本を見せてくださいました。
「いらなくなったトレーナーの袖を切ってゴムを通してね、手と足の部分を切り取って。ゆきちゃんはこっちの方がいいかな。」
傷口をもし舐めてしまったら、糸が切れてしまう事もあるそうです。
そうなると、再び手術をしなければいけなくなるので、抜糸が済むまでは注意が必要でした。
痛み&化膿止めの粉薬と、患部に塗るアカチンのようなお薬もいただきました。
「粉薬はネコカンと一緒に混ぜて食べさせてあげてくださいね。もし食べないようでしたら、この注射器で、水と溶かして飲ませてあげてください。」
抜糸は一週間〜10日後で、それまで、家で養生する事になりました。
「痛かったかい?…よく頑張ったね…」
そう言葉をかけながら、家路に向かいました。
3へ続きます。